足立の昔がたり
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毛けなが長川がわの名のおこり 昔、新にっさと里村むらというところに、心のやさしい長者が住んでいた。この長者には、美しい一人の娘むすめがいた。娘が年ごろになると、世話をする人があらわれ、川をへだてた舎とねり人の里の長者の息子のところにお嫁よめに行くことになった。この息子も美男子だったので、おひなさまのような夫ふうふ婦ができると、両方の村の人びとの間で、たいへんな評ひょうばん判になった。結けっこん婚すると二人は似にあ合いの夫婦になり、みんながうらやむような楽しい日々を送った。けれど、結婚して数年が過すぎた、ある夏のこと―いったいどうしたことか、この娘と嫁とつぎ先の両親との仲なかが、急に悪くなってしまったのだ。欲ほしがっていた赤ちゃんもできず、そのうえ両親との不ふなか仲が続つづいて、かわいそうに娘の顔から、すっかり明るさが消えてしまった。美しい��98

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