足立の昔がたり
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ある言葉が、いいやすいように変わっていくことは、少しも珍めずらしいことじゃない。たとえば「山さざんか茶花」という花は、もともと「さんさか」と呼ばれていたけれど、いつのまにかいいやすいようにひっくり返って、「さざんか」になったんだ。さっそく、正覚院を訪おとずれた義光は、お坊さんにお礼をいい、ご本尊に戦の勝利を報ほうこく告した。そのとき、お坊さんは、お祝いわいの言葉として、「今回の義光公の凱がいせん旋は、枯かれき木に又また花の咲さく如ごとくなり」(義光さまが戦に勝って戻もどられたのは、枯れた木に再び花が咲いたように、うれしいことです)と、述のべた。これを聞いた義光は、「大たい変へんえんぎのいいことをいってくれた」と、とてもよろこび、急に思いついたかのように、こういったのだ。「『枯木に又花が咲く』の『又花』を、これから、この土地の名にするといい」それからというもの、この土地は、「又花」と呼よばれ、その後いつしか「花又」と変かわって、現げんざい在は「花畑」と呼ばれるようになったということだ。 ※奥州↓今の山やまがた形県けんと秋あきた田県の一部をのぞく東とうほくちほう北地方のこと。※本尊↓その寺で、一番大切な仏ほとけさまのこと。※凱旋↓戦に勝って、帰ってくること。119

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