足立の昔がたり
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「たいへんだ、このままでは、みんな死んでしまうぞ!」この様子を見た大曽根村の名なぬし主新※八は、村人たちを救すくうため、小菅御殿を守っている堤防をこわし、川の水を小菅方面へ流そうと考えた。しかし、残ざんねん念なことに、この計画は事前に気づかれてしまった。新八は、堤防をこわされては困こまる下流の村人たちにおそわれて、堤防の上で命を落としてしまった。そうしているうちに、新八の計画が幕ばくふ府の役人の耳に入り、新八の家は取りつぶしという重い罰ばつを受けることになってしまった。新八の母親は、息子を殺ころされ、そのうえお家取りつぶしという悲しいめにあって、生きた心地がしなかった。母親はこの地を去るとき、せめて一目でも息子の死んだ場所を見ておこうと思い、堤防の上に立った。母親の目には涙なみだがあふれてきて、とまらなかった。するととつぜん、泣ないていた母親が叫さけんだのだ。「新八や、ヘビになれ!」124

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