足立の昔がたり
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128中なかがわ川土手のキツネ 中川土手は、数十年前までは桜さくら並なみき木があり、たくさんの人たちがお花見や散さんぽ歩に足を運ぶ、いこいの場所だった。 ある夏の夜のこと、一人のおじいさんが、この土手を散歩していた。川から吹ふくひんやりした風がほほをなで、飛とびかうホタルのほのかなあかりが美しく、おじいさんは、とてもいい気持ちだった。しばらくすると後ろの方から、こんな風に声をかけてくる人がいた。「お一人ではさびしいでしょう。一いっしょ緒に歩きませんか?」ふり向いてみると、一人の若わかい男が立っていた。顔ははっきりと見えないけれど、白っぽいかすりの着物をきた、人のよさそうな男だ。おじいさんは気を許ゆるして、一緒に歩くことにした。若い男は、おじいさんに合わせて、ゆっくりと歩き、おじいさんの話を、熱ねっしん心にあいづちを打ちながら聞いた。ところが、しばらく話していると―いきなり男のあいづちの声が、��

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