足立の昔がたり
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聞こえなくなった。立ち止まって、あたりを見みわた渡すと、そのすがたはどこにも見あたらない。「いったい、どこに行ってしまったんだろう」おじいさんは、急にさびしくなったけれど、がまんして、そのまま歩き続つづけた。ところが、途とちゅう中で道がわからなくなってしまい、同じ道を行ったり来たりした。そのうちにおじいさんは、水もない土手の上で、着物のすそをまくって、「深いよう、深いよう。もぐってしまうよ」といいながら、足を水に入れるしぐさをはじめた。129
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