足立の昔がたり
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しかし、あるとき、五太夫は風かぜ邪をひいたのがもとで、重い病気になってしまった。お医者さんに診みてもらい、薬を飲んでもよくならず、だんだん元気がなくなっていった。そして、何日かすると、かわいがっていたネコをまくらのそばにおいたまま、亡なくなってしまった。やがて四十九日の法ほうよう要に、村人たちが春日家に集まった。このとき、ちょうど近くの辰たつ沼ぬまの農家にネコが生まれたのだが―不ふしぎ思議なことに、このネコの前足に、「春日五太夫」という文字が浮うき出ていたのだ。春日五太夫の名を、その目で見た奥おくさんは、きっとネコが好きだった夫おっとの生まれ変かわりだと思い、そのネコをもらい受けることにした。さっそく、そのネコを夫のお墓はかに連つれて行き、お墓の土で、やさしくネコの体をなで134

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