足立の昔がたり
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千せんじゅ住にクジラが来た日その名前のとおり、本当に昔の荒あらかわ川は※よく氾はんらん濫した。記きろく録によると、江えど戸時代のはじめから明めいじ治のころまでで、百数十回も洪こうずい水があったそうだ。 明治時代、とくにひどかったのが明治四十三年(一九一〇)の洪水だ。足立全体が水みずびた浸しになって、それがきれいに引くまで何日もかかったらしい。 ようやく水が引いて人びとがホッとしたところで、今度は荒川に怪かいぶつ物が出た……という話が千住の町に広がった。なんでも千住大橋を少しくだったところに、黒くて大きな変へんなかたちをしたものが、チラチラとすがたを見え隠かくれさせながら、ゆっくりと泳いでいるというのだ。その話を聞きつけた人びとが集まってきて、荒川の両岸は、たちまち人でいっぱいになってしまった。�12

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