足立の昔がたり
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おいてけ堀ぼり 昔、堀ほりきり切から牛うしだ田のあたりに、まわりを緑の葦あしに囲かこまれた堀があった。この堀では、たくさんの魚が釣つれると評ひょうばん判だったので、たくさんの人が釣りに来ていた。 ある日のこと、一人の男の子が、堀に魚を釣りに来た。たくさんの魚が釣れたので、釣った魚を桶おけに入れて、家に持って帰ろうとした。そのとき―どこからともなく、気味の悪い声が聞こえてきたのだ。 「おいてけ! おいてけ!」まるで、地の底そこから湧わいてくるような、低ひくい不ぶきみ気味な声だ。けれど、まわりを見まわしてみても、だれのすがたもない。「きっと、気のせいだ」 そう思った男の子が、また歩き出すと―。�15

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