足立の昔がたり
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9 よく朝、男の子が土間に置おいた桶の中を見てみると―入っているはずの魚が、一いっぴき匹残のこらずいなくなっていた。桶のまわりを見てみると、なんと、魚が歩いたと思われる胸むなビレや尾おビレのあとが、はっきりと残っていたそうだ。 それからというもの、この堀で釣りをした人には、このような不ふしぎ思議なことがおこるようになった。 そして、だれがいうでもなく、この堀のことを「おいてけ堀」と呼よぶようになったという。17「おいてけ堀」の話は有名で、いろいろな土地に似にたような話が伝つたわっているよ。本ほんじょ所七不思議の中にも入っているし、魚を三匹返すと無ぶじ事に帰れるけれど、まったく返さないと道に迷まようとか、堀から手が出てきて魚を取り返される、あるいは、その手につかまれて、堀に引ひっ張ぱり込こまれる……という、怖こわいものまである。

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