足立の昔がたり
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1119槍は行列の花形、その家の格かくを示しめすもので、どんなことがあっても傾かたむけたり、倒たおしてはいけないとされていた。たくさんの人びとが見守るなか、徳川ご三家と※いわれるほどの、水戸藩はんの槍を倒すわけにはいかない。一行は、はたと困ってしまった。枝を切る―面目を保たもつには、それしか方ほうほう法はないのかと、みんなが思ったとき。「景けしき色がいいのう。少し休もうではないか」光圀が、穏おだやかな笑えがお顔でいった。「みんなも休め。槍は、そう、そのみごとな松の幹に立てかけておきなさい」そして一行は、清亮寺でひとときお茶を飲み、風ふうけい景を楽しんだ。

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