足立の昔がたり
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タヌキのいたずら 梅うめだ田にあるお寺の話。 その寺では、住じゅうしょく職がいなくなり荒あれていた時期があった。すると、だれもいないことをいいことに、いつとはなしに一人の按あんま摩さんが住みついた。 この按摩さんは、近所の人から「とう按摩」と呼よばれ、声がかかると、夜道もいとわず杖つえをついて出向いた。近くに他の按摩さんがいないこともあって、このとう按摩はけっこう繁はんじょう盛していた。ある晩ばんのことだ。かなり遅おそくなってから、寺の雨戸を叩たたく者がいた。「どなたですか」 とう按摩が尋たずねると、こんな声が返ってくる。「遅くなってすいませんが、按摩をお願ねがいします」「わかりました。さっそくお伺うかがいいたします」�30

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