足立の昔がたり
43/152

者も数多くいたそうだ。そうした隊員の中に、梅うめじま島の葦あしの茂しげみに身を隠かくした者がいた。この者は五人で、いずれも変装し、大八車に※少しばかりの家かざい財道具と、一、二個この石を積つんでいた。こうした格かっこう好がよかったのか、どうにか無ぶじ事に、ここまで逃れてこられたのだが、そのほとんどがケガをしていて、上にまとった衣いるい類をはぐと、体のあちこちから血が流れ出ていた。五人ははげまし合いながら、葦の茂みの中で数日を過すごしたが、茂みの中は薮やぶ蚊かが多く、また初しょか夏の日ひざ差しのために傷は悪くなるばかりだった。もはやこれまで……と覚悟を決めた五人は、近くの農家の人を呼よんでいった。「私わたしたちは、ここで自害して果はてますが、いかにも残ざんねん念です。ここに石を持ってきておりますので、私たちが死んだら、この石を建ててまつってください。きっとみなさまの身をお守りします」農家の人たちは、かつては自分たちも天てんりょう領の※百姓、徳とくがわ川さまのご恩おんを受けていると、頼たのみを聞き入れることにした。39

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です