足立の昔がたり
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47しかし、妙円尼の平へいおん穏で幸せな日々は長く続つづかなかった。数年たったある日、風かぜ邪がもとで、その若わかい命を落としてしまったのだ。村人たちは、その死をたいへん悲しんだ。けれど村人たちよりも悲しんだのは、我わが子に先立たれた父親の千葉常胤だ。悲しみにくれた常胤は、妙円尼の面おもかげ影を何とかして本木村に残のこし、供くよう養してやろうと考えた。在ありし日の妙円尼の美しいすがたを木に刻きざみ、それを「夕顔観音」と名なづ付け、娘むすめの建てた持仏堂に安あんち置し、朝夕その霊れいをなぐさめた。

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