足立の昔がたり
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549西にしあらい新井大だいし師のはじまり 今から千数十年も昔のころ。東国に悪い病気がはやり、人びとをたいへん苦しめていた。そのとき、たまたま全国を旅していた弘こうぼうだいし法大師が、足立の里を訪おとずれた。それまでの長旅でたいへん疲つかれていた弘法大師は、そこに生えていた松まつの根もとでひと休みした。すると十一面観かんのん音が夢ゆめの中にあらわれて、弘法大師自身の危きき機と、村人に病気や災さいがい害があることをお告つげになった。夢から覚さめて我われにかえった弘法大師は、体を清きよめて十一面観音像ぞうを刻きざみ、余あまった木で自分の像も彫ほりおこした。そして弘法大師はお堂どうを建たてて十一面観音をまつり、二十一日の間、昼も夜も寝ねないでお祈いのりをした。その後、自分の刻んだ自像にすべての禍わざわいを背せお負わせて、井いど戸の中に沈しずめたのだ。すると、弘法大師の災さいなん難はもちろんのこと、村人たちの悪いはやり病もたちどころに消えて、村には再ふたたび平和な日々が訪れた。��【西新井大師】西新井一丁目15-1

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