足立の昔がたり
89/152

川に落ちた火の玉 昔、埼さいたま玉の比ひきぐん企郡では材ざいもく木がたくさんとれた。その材木を筏いかだにして荒あらかわ川を※下り、江えど戸まで運ぶことを仕事にしている人たちがいた。その人たちが江戸に入る前の日に、寝ねと泊まりするために筏を泊めていたところが、今の新しんでん田だったそうだ。そのころの新田には、人が住んでいなかった。けれど、あるとき―苦くろう労して材木を運んできた人の中に、何か記きねん念になるものを残のこそうと、故こきょう郷から持ってきた里芋いもの種たね芋を植えた人たちがいた。新田は里芋が育つのにはうってつけの土地だったらしく、その人たちが再ふたたび訪おとずれたときには、たくさんの里芋ができていた。人びとはとてもよろこび、「ここは、俺おれたちの土地だ、ここに移うつり住もう」と、この地に住むようになった。��85

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です